「池袋モンパルナス」をご存知ですか。1930年代から40年代にかけて、旧長崎町(現在の要町・長崎・千早地域)には、多くの芸術家たちが居住したアトリエ付き借家が存在し、そのアトリエ村では画家、彫刻家、詩人、音楽家らさまざまなアーティストたちが交流を図り、ほとばしるようなエネルギーを発していたのです。
それを総称して仏パリのモンパルナスになぞらえて、こう呼んだのです。特にこの1930~40年代は、第2次世界大戦から終戦、そして冷戦の始まりといった政治的に“混乱”していた時代でもあり、戦時中は自由な作品発表の場が失われ、そして戦後に新たな美術運動が始まる、といった激変期でもあったようです。
アトリエ村の模型も常設展示(豊島区提供)
さて、前置きが長くなりましたが、豊島区立郷土資料館(豊島区西池袋2-37-4)では2月6日から、企画展「アトリエのときへ‐10の小宇宙展」が始まりました(3月25日まで)。覧料無料です。9時~16時30分。毎週月曜日と第3日曜日、祝祭日は休館です。
展覧会のテーマは『旅』。紹介している作家は齋藤求、寺田政明、小熊秀雄、鶴田吾郎、高山良策、建畠覚造、麻生三郎、吉井忠、桂川寛、入江比呂の10名で、いずれも池袋モンパルナスを代表する作家です。
夕焼けに染まるキャンパスを印象的に描いた《夕陽の立教大学》(小熊秀雄)や、平成28年度より新たに豊島区所蔵となった《ブルターニュの巨石(対話)》(寺田政明)など、「選りすぐりの作品・資料40点以上を見ることができる」(豊島区のニュースリリースから)とのこと。
一方、板橋区立美術館(板橋区赤塚5―34―27)では2月24日、20世紀検証シリーズの第6弾となる「東京⇋沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村」が開幕します(4月15日まで)。観覧料は一般650円、高校・大学生450円ほか。9時30分~17時。月曜休館。
池袋モンパルナスをはじめ、落合文化村、ニシムイ美術村(沖縄)に集った画家や詩人ら46人の作品約90点を通して、戦前から1971年の沖縄返還協定調印のころまでの、東京と沖縄間の文化交流の一断面を紹介するそうです。講演会なども予定されています。
戦前の池袋、落合、ニシムイの各アトリエ村は、画家たちにとっては一種のコミュニティであり、「戦争や占領による抑圧の下にあった彼らの拠り所であり、世代や地域、思想を超えた交流によって多様な傾向の作品が生み出された」(板橋区立美術館の資料から)という。そして戦後、池袋モンパルナスは再建され、ニシムイ美術村は首里に建設され、それぞれの地で多くの作品が生み出され、また地域間の交流が進められ相互に刺激し合ってきた。
今回の展示会は、こうした舞台で活躍してきた代表的な作品を紹介する。主なものをあげると、佐伯祐三《下落合風景(テニス)》1926年、松本竣介《郊外》1937年、長谷川利行《新宿風景》1937年、杉全直《沈丁花》1942年、南風原朝光《窓》1954年、安谷屋正義《望郷》1965年など。作品内容はホームページでも確認することができます。
(『池袋15´』3月号=2月20日発行=で、「東京⇋沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村」の招待券プレゼント記事を掲載)
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